|自己表現の大切さ。それを幼少期から意識していく
 ヨーロッパの舞台。ここからさらに、小林は強豪リーグのクラブへの移籍を狙っている。上のレベルに行けば行くほど、テクニックもフィジカルも、自分を上回る選手が出てくる。
 そんな激しい戦いの中で、小林があらためて痛感することがある。
「誰かに何かを思われるのは嫌だとか、監督やコーチに怒られたくないとか、そんな目に見えないプレッシャーに縛られてプレーしていてはいけない。僕も日本で育ってきた人間。日本にはそういうプレッシャーを気にして萎縮してしまうような空気はあるように思う。でも、サッカーの世界では自分の意見を言えない人間は、試合には出られない。オランダに来て感じるのは、こちらでは子供の頃からみんな選手同士だけでなく、コーチにも話をしている。そして、子供から大人の世界まで、それを抑えつけるような雰囲気もない。
 自分を表現する。感情を出す。トップレベルになればなるほど、それができるに越したことはない世界。絶対に自分の意見、自分の考えをしっかり伝えられる選手の方が、周りに尊敬され、頼られる存在になっていく。これこそ、僕が子供の頃から今まで、サッカーを通して学べたことです」  そして、今回のサミーサッカープロジェクトの挑戦について、こう話す。
「幼少期から技術、戦術だけでなく、メンタル面についてもアプローチしていく。親や周りの大人との関係も含めて、子供の頃から自分づくりをしっかり自分自身で意識していくことは、間違いなく有意義な取り組みだと思います。
 将来、世界に出て、自信満々に相手と対等に戦える選手たちが、ここからたくさん育ってきてくれることを期待しています。まだまだ自分も発展途上なので、偉そうなことは言えない。ただ一つだけ言えること。それは、必要以上に周りを気にするな、ということ。自分が思ったことをどんどん、無我夢中にチャレンジして欲しい。そして自分のために時には厳しい態度をしてくれる親や指導者を大切にしてほしい。感謝の気持ちを忘れず、まっすぐやり続ければ、チャンスは誰にでもくる。その愚直さも、僕は立派な才能だと思う」

 才能。その言葉の意味は、想像以上に深い。決して、見た目でわかりやすい能力を多くの人間が持ち合わせているわけではない。
一つ筋を通し、その道を進み続ける。派手さはなくても、これを貫く意志や思いもまた、紛れもない能力である。
そして子どもたちにとって、その突き進む力をつけていくことが、目標、夢へと続く。何より、有言実行してきた小林が明かした思いには、強い説得力がある。

text by 西川結城(Yuki Nishikawa) 大学在学中より横浜FCの専属ライターとして活動を開始。2007年よりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』の記者として数多くのJリーグチームと日本代表を担当。海外クラブで活躍する本田圭佑や吉田麻也も若い時代から取材。現在はサッカー、スポーツ誌各媒体にも寄稿している。