事あるごとに、小林祐希はこう話す。

「自分は平凡ですよ。才能だけでここまで来たなんて一度も思ったことはない」

 ただ、誰よりも負けない能力が一つだけ存在した。

「何かに没頭する力、ですね」

それは大人になって身につけていったものではなく、幼少期から徐々に養われていったという。
 そしてその幼い時代からサッカーに打ち込む自分と正面から向き合ってくれたのが、彼の両親だった。

「僕の親は、自慢ではないですけど本当に子供を自立させる育て方という意味では、すごく模範だなと感じています。今でも本当に感謝しています。親の感情で何かをやらされたことはなかった。中には、ピアノや水泳、習字に塾、その他にもいろんな習い事をたくさんしていることを誇らしげに話す友達もいた。もちろんそれが全部無駄とは思わないけど、でもどこかで親が子供の意向に関係なくやらせているところがあるなら、それは将来的にはあまり意味がないのではないかと思う。何より、僕が子供の頃からの実体験にもとづく意見です」

過干渉と放任、どちらも両極端すぎる育て方は当然望ましくない。子供とのかかわり合いは距離感が大切だということは、世の中のどんな親でも理解しているだろう。ただ、言葉で言うほど簡単ではないことも、身にしみて感じるに違いない。
 小林の両親は、厳しく接する部分と、温かく見守る部分、このバランスが絶妙だったようだ。さらに昔のエピソードを、彼自身が楽しそうに振り返る。

「一度も、僕のプレーや試合に関してうちの親は口を出してきたことはなかった。試合に出られなくても、コーチに文句を言ったこともなかった。
 ただ、自分でサッカーをやると決めたからには、その自分に嘘をつくような行動にはものすごく厳しく怒られた。僕が朝6時から自発的に朝練をすると言って、でも実際にはグラウンドに行ってただ座っていたり遊んでいたりしていた時に、それがバレると父親は『何でそういう嘘をつくんだ』と怒った。例えば練習でもリフティング30回終わった人から座っていいという時に、僕は一番早く終わりたかったから数をごまかした。すると『お前は10秒で15回もリフティングができるのか。ならできるまで家に帰ってくるな』と。とにかく、自分に嘘をつくようなことに対しては、徹底的に厳しく正されたことを覚えている」

 そんな自らの幼少期を踏まえながら、小林は子どもたちのサッカー現場でよく見られる光景を思い浮かべた。

「よく、子供の試合とかで親が息子に『何であそこでシュートを打たなかったんだ!』とか『何であそこでうまく守れなかったのか』とか言っている場面を見かけますよね。でも僕は、それは子供にとっては逆効果だと思う。それでは子供は伸びない。その言葉通りやってうまくいかなかった時に、『お父さんのせいだ』とか『コーチのせいだ』と人の責任にしてしまう。誰かがどうにかしてくれるだろうという癖が、幼い頃からついてしまう。間違いなく成長の妨げになる。自分がうまくいく時、いかない時は十代の頃からあるもの。その時にどういう考え方や振る舞いができるかは、小さい頃からどう育ってきたかが深く関係するものだと思います」

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