|余計な手助けはいらない。没頭とは、子供自身が見つけ出すもの
 没頭する。それは、誰かに何かをやらされることとは真逆の感覚である。子ども自身が何かを見つけ、それに夢中になるかどうかは、その子自身の選択。ただ早い時期で選んだものに飽きが来たり、それを手放すようなことがあればどうするか。
 ここは、親として難しい判断ではある。子供はまだ物事の分別や正確な判断ができないこともある。簡単に飽きてしまう姿を見て、態度を正そうとする気持ちになるのも、大人としての親の責任とも言える。
 小林はここでも屈託なく自分の意見を明かす。子供を、必要以上に子供扱いする必要はないと、彼は考える。

「子供が『練習に行きたくない』と言えば、それを受け入れてあげてもいいと思うんです。強制的に『行きなさい』と言うこともあるだろうけど、その時点でその子にとってサッカーがもうやらされているものになっているところがある。やりたくないなら、気持ちも乗らないのに無理にやってもそれは時間の無駄じゃないですか。親が正しい方向に導くという大人としての考え方もあるけど、それが本当に正しい方向かは親にとってもわからない。大人が考えたレールに子供を当てはめるよりも、子供が進む道を後ろから見守る方がいいと思います。
 ボールを蹴りたくない、そのかわりに隣の砂場で土いじりがしたい。ならそれをやらせてあげればいい。もしかしてその土いじりが、その子の芸術的感覚を刺激して、新たな没頭を生むことだってあるわけです。みんながやっているから、今流行りだから子供にサッカーをやらせるのではない。『スクールのお金払っているのはパパやママなんだから!』と叱る親がいますが、正直子供からしたら『勝手に入れられたんだからそんなこと知らないよ』という話です(笑)。とにかく自分の子供は何に没頭するんだろう?そんな視点で向き合っていけば、絶対子供の自立につながっていくと思います」

自分にはまだ子供はいないにもかかわらず、まるでどこかの教育者のように真剣に語る小林。何事にも真剣に向き合う姿勢は、二十代半ばにして頼もしく映った。
 教育者という言葉が出てきたが、小林は「この没頭する力というか才能が、その後の人としての自分形成や行動にものすごく関わっていったんですよ」と語る。
 幼少期に養い、徐々に発揮した没頭する力。その後、小林がいったいどんな経験を果たし、成長を遂げたのか。ここからさらに、興味深い話題が展開されていった。
(次号に続く)

text by 西川結城(Yuki Nishikawa) 大学在学中より横浜FCの専属ライターとして活動を開始。2007年よりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』の記者として数多くのJリーグチームと日本代表を担当。海外クラブで活躍する本田圭佑や吉田麻也も若い時代から取材。現在はサッカー、スポーツ誌各媒体にも寄稿している。