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 いよいよ、今回から本格的にスタートする、ヤングアスリートマネジメントコラム。
 序章としてアップされたVol.00では、“トップアスリートのための「マネジメント」を日常に”というテーマで、このプロジェクトの骨子となる考え方を図や言葉で簡単に説明しました。
 今回のVol.01からは、保護者と子が、どんなベクトルで、どんなコミュニケーションを取っていくことが有効であるかを、より具体的に提示していきます。
 これは、子どもたちにサッカーを指導するプロジェクトです。しかし、ヨーロッパのトップクラブなどは、サッカー選手を養成する感覚以上に、一人の人間を育成する意識で子どもたちと接しています。その基本的な考え方をもとに、サミーサッカープロジェクト独自の観点も交え、サッカーを通した人間育成についての考えを共有していきます。

 Vol.00でも提示した子どもの育成ピラミッドを構成する各項目(一番下部から頂点に向かって順に、マネジメント、メンタリティ、技術、戦術、体力)のうち、下部の二つにあたる「マネジメント」と「メンタリティ」、ここが特に保護者と子どもの関係が密に形成されていく要素となっていきます。「マネジメント」とは、保護者による総合的なサポート、そして「メンタリティ」は保護者による日常的なサポートと分類されます。

 その中でも育成ピラミッドの基盤を担う「マネジメント」の部分こそが、その後の子どもの成長のカギを握っている要素と考えています。そして、そこでの保護者の役割を体系化することで、これまで何気なく進めていた関係をわかりやすく明文化、可視化することで、その重要度の理解を深めていきます。
 Vol.00では、マネジメント領域における保護者の役割を5つに細分化し、それぞれの行動指針についても簡単に記しました。今後は、各項目について事例や専門家の意見も交えながら詳しく説明していくことになりますが、今回のVol.01はその大前提として押さえておきたいことをお話します。


|社会で働く方々やトッププロの選手も意識する、PDCAサイクル

 子どもが将来サッカー選手になる上でも、そして一人の人間としても成熟した大人になるためにも、目指すべき目的は自律心(自立心)を養うこと。このプロジェクトも、サッカーを通して子どもたちが自律(自立)していくことが一番の目的となります。
 そこで大切になってくる要素があります。それは、近頃世間でもよく聞くようになった、「PDCAサイクル」という考え方です。こちらの簡単な説明は、すでに本サイトの“SAMMY FIELD PROGRAM”内でも図を用いて展開しています。

 PDCAは、四つに分類されるそれぞれの行動期の頭文字から取られたものです。PはPLAN(計画)、DはDO(行動、実践)、CはCHECK(検証、課題認識)、そしてAはACTION(再実践)と、人間が物事を行う上で必要かつ有効な作業を順序化したものです。社会で働く方々にとっては当たり前のように意識するサイクルであり、当然世界トップクラスのサッカー選手も結果を出すための手法として、このサイクルをしっかり辿りながら日々実力向上と研磨の道を歩んでいます。

 わかりやすく言えば、将来子どもたちが人生の中でこのサイクルを自分自身で回転させることができれば、それは自律(自立)できたことになります。
 こうして文字にすれば簡単に思えるサイクルですが、人間は誰もが完璧でなく、誰にでも弱さがあるものです。当然、このサイクルをすべての人々が意識し体現できているわけではなく、人格形成が未熟な段階の子どもとなれば余計に進めていく難しさがあります。
 PDCAのうち、P(計画)とD(行動)は、比較的多くの子どもたちが自主的に行えるものです。何かを始めるにあたり、例えばそのスタートに自分のプランを練って、そして実際に行動する。目の前にある物事に対するやる気やモチベーションも高い時期であり、子どもたちも積極的に取り組むわけです。


|検証と再実践。適所で必要になる、保護者のアシスト

 しかし、ここからが二の足を踏んだり、億劫になる場合が増えてきます。Cの検証とAの再実践の段階です。
 勉強に例えれば、昔から復習はすごく大切と言われてきましたが、ただ新しいことを学ぶ新鮮さに比べてこれまでのことを見直す作業は退屈でもあります。疎かになりがちな子どもたちも多いため、教育の現場ではあえて声高に復習や見直しの重要さを伝えています。
 楽しく、新しいことに目が奪われがちになる子どもたちに、成長に必要なサイクルを意識させ行動に移す。そのためにこのCとAの段階で、保護者の方々のかかわり合いが非常に重要となってくるのです。自発的にPとDの段階を進んだ子どもに対して、そこから保護者がこれまでの課題・弱点と長所、その両面を子どもと一緒になって見つめ直し(Cの段階)、そしてそれを踏まえて課題克服と長所促進のために再度実践する方向に結びつけていく(Aの段階)。すべてのことに保護者が介入するのではなく、適所で大人としての経験と保護者としての愛情を持って子どもの自律(自立)に向けてアシストするような意識が理想的です。また何より、子どもにとっては保護者が寄り添いながら自分の物事に関わってくれる行動自体が、温かみを感じる機会となります。


 PDCAサイクルの浸透と推進は、保護者マネジメントにおける各役割とも密接に関わり合っていくものです。この基本的な考え方を踏まえて、次回からは子どもと保護者の役割を細分化していきます。

text by 西川結城(Yuki Nishikawa)

大学在学中より横浜FCの専属ライターとして活動を開始。2007年よりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』の記者として数多くのJリーグチームと日本代表を担当。海外クラブで活躍する本田圭佑や吉田麻也も若い時代から取材。現在はサッカー、スポーツ誌各媒体にも寄稿している。