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 これが、まず保護者が『マネージャー』として意識したい行動になります。本プロジェクトを監修する株式会社グラスルーツの今野敏晃氏は『マネージャー』の基本的な役割について、こう話します。
「例えば学校選びや、サッカースクール選び。これは子供の環境の整備になります。『プロデューサー』の役割として、子どもの将来の目標に向けた課題を大人がうまく細分化していくことを挙げましたが、次にそのための環境をどう形成していくかという領域に入っていきます」
 環境の整備には、タイムマネジメントとストレスマネジメントの二つの側面があります。タイムマネジメントとは子どもの時間管理であり、何時に起きて学校に行き、何時までに帰宅するなど、1日の基本的な行動を把握しながらコミュニケーションを取っていくことです。

 『マネージャー』として、より意識を傾ける必要があるのが、ストレスマネジメントになります。子どもは明るく振る舞っているように見えて、内心はストレスを抱えやすいと言われます。大人になれば、これまでの人生経験を踏まえた解消法や対処法を見つけやすいですが、まだまだ知識も器量もない子どもは、過度にストレスを抱えてしまうこともあります。
前述の今野氏もこう話します。
「例えば、休みの日に子どもをどこかに連れて行くようなことも、保護者の方にとってはストレスマネジメントです。子どもはストレスを抱えた時に、結局一番近い大人の存在である保護者にしかそれを打ち明けられないのです。さらに思春期になっていけば、余計にデリケートな心境になる子もいます。保護者からすれば、ある意味子どものはけ口を作ってあげる意味でも、最も身近な存在として振る舞うことが大切です」



|相対評価が、子供のストレスにつながることも

 『プロデューサー』の役割として、子供の将来の目標に向けた大きなPDCAサイクルを意識させることが大切だと話してきました。そしてその目標に向けて、課題の細分化を保護者が子どもに寄り添って行うことの大切さにも触れてきました。

 細分化、すなわち目の前の課題ごとに小さなPDCAサイクルを作り、そのサイクルを課題ごとにいくつも回していくことで、大きな目標に向けたサイクルの弧を描くことになります。また、この連続性を意識することは、何より子どものモチベーションの継続にも役立つことです。しかし、子どもはそうした課題一つ一つに向き合うたびに、さまざまな評価にも直面していきます。「あの子は、自分より足が速い」「僕はあの子よりも下手くそだ」否が応でも、そんな対比をしてしまうわけです。サッカーは集団競技。どうしても、子どもたちは自ずと周りの子たちと自分を見比べてしまうものです。さらに保護者の中にも、例えば「うちの子は背が小さいから」とか、相対評価で子どもを見てしまいがちになる場合もあります。


 サッカーとは、何も身体能力も技術も万能な選手でなければ活躍できないスポーツではありません。よくプロの選手を取材していると、「自分はコンプレックスの塊だった」という声を数多く聞くものです。足が速くなくても、日本代表になった選手はいる。テクニックがなくても、Jリーグで得点王になった選手もいる。彼らに共通して言えることは、長所と短所をしっかり把握した上で、目標に向けて自分自身を絶対評価することに長けているのです。
 前述した通り、子どもは黙っていても外の世界で自分の相対評価を理解するものです。だからこそ、保護者の方々は子どもに対して絶対評価=肯定することが大切になってきます。評価という言葉を使うとどこか堅苦しいように聞こえますが、保護者は誰よりも子どもの家族であり、支援者であり、味方です。つまり、短所を意識しストレスを抱えるような子どもに対しても、逆に長所を認め、肯定することが『マネージャー』としての重要な振る舞いになるのです。  

 最後に、少し古い選手になりますが、1990年代を中心に活躍した元メキシコ代表GKのホルヘ・カンポス選手。派手なGKユニフォームで一世を風靡しましたが、彼はGKながら身長は160cm台(公称は175cm)でした。普通であれば、「GKは背が高くなければできない」という固定観念を前に屈してしまいそうですが、「背は低くても自分には身体能力がある」と諦めず、結局メキシコ代表の守護神としてW杯に2大会出場しました。さらに、足下の技術を活かし、時にはFWとしてもプレー。所属クラブで通算30得点以上も挙げた実績の持ち主でもあります。
 このように、サッカーにはコンプレックスや短所に負けることなく、目標を達成した選手たちがたくさんいます。こうした成功例を、保護者の方々が子どもに語りかけていくことも、『マネージャー』として大切な接し方になるかもしれません。

text by 西川結城(Yuki Nishikawa)

大学在学中より横浜FCの専属ライターとして活動を開始。2007年よりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』の記者として数多くのJリーグチームと日本代表を担当。海外クラブで活躍する本田圭佑や吉田麻也も若い時代から取材。現在はサッカー、スポーツ誌各媒体にも寄稿している。